March 30, 2005

人間の安全保障と東大人文科学系の世界ランク

 お久しぶりです。駅の線路沿いに桜祭り用の提灯が光無く揺れている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。以前紹介して、ある程度関心を引いた「人間の安全保障プログラム」ですが、毎回やっているセミナーが面白かったりします。興味のある方はどうぞ。

第8回HSPセミナー 『スマトラ島沖地震被害と復興の課題 ─人間の安全保障の視点から─』 日時: 2005年4月13日(水) 18:00-20:00

場所: 東京大学駒場キャンパス 2号館 3F 308教室
司会: 森山 工(東京大学)
報告者: 長 有紀枝(東京大学 「人間の安全保障」プログラム博士課程・ジャパン・プラットフォーム)  
コメンテーター: 西 芳実(東京大学 地域文化研究専攻)

 ちなみに司会の森山さんは自分の仏語教師だった。まぁ、安全保障的な研究的なプログラムとしては、「日本学術振興会 人文・社会科学振興のためのプロジェクト研究事業領域供(刃孫獣曚妨けた知の再編 ジェノサイド研究の展開」なんてのも行われているような。具体的な発表pdfも見ることができて面白い。経済でもアクチュアルな政治でもない、人文・社会諸科学が、どのように平和構築に貢献できるのか。社会工学的にではなく、どのように、制度を安定化へ導き得るのか。人文・社会諸科学があるひとつの問いを突きつけられている現場でもあります。

 ってか、意外にも(?)、THESによる大学ランキングによると、東大の人文科学(The arts and humanities)分野は9位に位置しているそうな。日本の大学としては、その他、京都大学が15位にランクイン。ランクに馴染まない分野ではあるけれど。むしろ上記のような、具体的な形で試されるべきだとは思う。

  先日、The Times Higher Education Supplements (THES) の発表した世界トップ200大学で東京大学が12位にランキング、また自然科学、工学・情報工学の分野でいずれの分野でも7位にランキングされた旨それぞれご報告しましたが、このたび人文科学分野でのランキングが公表されましたのでご報告申し上げます。今回は世界のトップ50大学を、人文科学(The arts and humanities)の分野でランキングしており、東京大学は9位に位置しています。日本の大学としては、京都大学が15位にランキングされています。

July 16, 2004

東大ゲーム研究プロジェクト

ゲーム研究プロジェクト

2003年はファミコンが誕生してちょうど20年になります。この間、市場開拓と技術革新に支えられ、日本のゲーム産業は大きく成長してきました。そして、この数年はオンラインゲームの登場により、テレビゲームの世界は大きく変わろうとしています。

私たちは、2003年4月、産学共同研究プロジェクトとして「東京大学ゲーム研究プロジェクト」をスタートさせました。このプロジェクトは、テレビゲームを現代の知的複合体としてとらえ、テレビゲームと社会、あるいはテレビゲームと技術の関係性を重視して、テレビゲームを文理を越境した複合的な視点から研究することを目的とし、東京大学大学院情報学環歴史情報論研究室とIGDA東京(International Game Developers Association東京支部)がともに運営しています。

 もちろんテレビゲームも学的研究の重要な対象となっています。「文理を越境した複合的な視点」からゲームを研究するプロジェクト、進行中。大学院学際情報学府にて。どうだろう。シンポジウム系は要チェックかな。

June 19, 2004

死と臨床の死生観(21世紀COEシンポジウム)

6月26日(土) 14:00〜17:30 東京大学(本郷)医学部講堂

第2部「死の臨床と死生観」(シンポジウム)
こちらのシンポジウムには、どなたでも当日に御自由に参加できます

 ☆パネリスト:
森岡 正博(大阪府立大)
柳田 邦男(作家)
広井 良典(千葉大)
若林 一美(山梨英和大)

 ☆司会 :
竹内 整一(東京大学)

メンツがいいですねぇ。これは参加してみよう。
ちなみに興味を抱かれた方へ、医学部講堂までのアクセス地図はこちら

June 08, 2004

「東大教師が新入生にすすめる本 」

東大教師が新入生にすすめる本

2004年「UP」4月号アンケートより

下に掲げる設問の(1)は先生方のご専門にかぎることなく自由に、(2)は新入生が専攻を選ぶときのヒントになる本、その専門分野へのイントロダクションになる本、その分野の研究の奥行きを垣間見せてくれるような本についてお書きいただきました。

(1)私の読書から  印象に残っている本
(2)これだけは読んでおこう  研究者の立場から
(3)私がすすめる東京大学出版会の本
(4)私の著書

いや、この特集は毎年素晴らしいなと思いながらヲチってます。ちなみに過去のものも知りたい場合はつい最近こんな本が発売されたらしい。東大ブランド。


東大教師が新入生にすすめる本

文藝春秋

June 07, 2004

「人間の安全保障プログラム」(東京大学総合文化研究科)

 こんな専修過程ないしプログラムがスタートしていたようですよ。院で。国際関係論などに興味があり、なおかつ特に平和を心から願い平和構築のために役立ちたいと思っている素敵なあなたにはぴったり。受験生のみならず一般枠もあり。

人間の安全保障プログラム

Q2. このプログラムの目的を教えてください?

A. 「人間の安全保障」プログラムの目的は、国際社会が必要としている「人間の安全保障」を追求する「人財」を養成することです。文字通り、「人財」養成です。「人間の安全保障」問題を深く理解し研究すると同時に、この問題に自ら関わっていく「人財」です。実務の経験や実務に関心がある人には理論や概念(つまり理屈)をもっと学んでもらい、学問の世界しか知らない人には現場を知ってもらい、現場からの発想を学んでもらいます。


Q3. どんな人にふさわしいプログラムなのでしょうか?

A. このプログラムが目指しているのは、「人間の安全保障」をめぐる現場と言葉をつなぐことです。現場を知っていてもそれを伝える言葉がないと個別の状況の外に出ることができませんし、他方、現場を知らないと言葉も上滑りしがちです。そのために、多様な経験を持つ人たちにはステップアップするための言葉を、そして、経験が乏しい人たちにはインターンを単位として認める場合もあるなど、現場への接点を提供することを目指しています。


「人間の安全保障」について

 1994年に国連開発計画(UNDP)が提唱した新しい概念であるが、日本政府の推進により国際社会で広く流通しつつある。

 ケンブリッジ大学教授でノーベル経済学賞を受賞したインド生まれの経済学者アマルティア・セン博士が以前より主張していた開発理論に基づき、 UNDPが新しい人間開発のあり方を提唱する中に「人間の安全保障」が位置づけられた。

 持続可能な人間開発にとって、人口爆発、経済的不平等、人口移動(難民流出)、環境悪化、薬物、国際テロなどが主要な脅威とされ、経済、食糧、健康、環境、個人、地域社会、政治の7つの分野別安全保障が提起された。

 日本政府も積極的に取り組んでおり、国連に「人間の安全保障」基金を設置したほか、2000年まで国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子博士と上記のセン博士を共同議長とする国連「人間の安全保障」委員会の運営を2001年の設置当初から支援し、2003年に最終報告書が提出された。

そうかそうか。アマルティア・センが理論的基盤となっているわけか。 「人間の安全保障」の概念図は以下の通り。

H_sec.jpg

Q8. 特定の学問分野を選択してどこかの専攻に所属するということと、このプログラムが学際的な特徴をもっていることと矛盾しませんか?

A. 決して矛盾しません。「人間の安全保障」に取り組むには学際的なアプローチが不可欠ですが、個々の研究者や学生が専門性を持って取り組むことも不可欠です。学際性は、専門性を身につけた上でのことなのです。

笑った。そんなこと考えてる奴いないって。でも学際は専門性の裏付けあってこそ、ということはいくら言ったも言い過ぎることはない。そして総合文化研究科のあらゆる専修過程から数名づつここに人数枠が取られてゆくので、オレの院試も厳しくなりそうだ。むしろここに‥

 「安全保障」の現場と理論をつなぐ試み。非常に面白く可能性があると思いますよ。

April 19, 2004

何を学んでいるのか淡々と書いてみるよ

 これも個人的エントリーですが、自分がどういう授業を普段取っているのかを紹介してみようという企画です。純粋にほかの人のを知りたいなー、という興味関心があるから、自分も書いてみます。文系は楽、とかいったのは誰ですか?

月曜:
2限「死生学特殊講義:ライフサイクルと人間形成」 エリクソン・ユング・シュタイナーを手がかりに、人間形成をめぐる問いについて検討。とりわけ、「死生観」と「教育観」の関連に焦点を当てる。
4限「文化人類学ゼミ」@駒場キャンパス。他学部聴講という形で受けてます。毎週1冊〜2冊分厚い古典を読まされてます。今週はデュルケーム『社会分業論』に取り組まねば‥。本読ませすぎですが、福島教授がきわめて魅力的なので食らいつこうという決意。

火曜:
2限「心理統計学」ひたすら統計です。ああつまらない。宿題もやめてくれ。
3限「哲学ゼミ」ヒュームの『人間知性研究』を原典で読んでます。因果性とは何かの探求。読書しんどいなぁ。
4限「心理学ゼミ」認知心理学の思考に関する著名な本を原典で。ただやはり心理学のゼミだと、議論が技術的なものに終始してしまう感があって、何か面白くない。でもこれが主ゼミです。これまたパワーポイントとか用いて準備せねば。死、です。
5限「社会学特殊講義:ルーマンの全体社会論」今を(ある意味)ときめく宮台真司さんなんかもかなり理論的に依拠しているルーマンの社会理論を、レクチャーしてくれる授業。久々に受身になれる授業。でもルーマンはかっちり抑えておかねば。

水曜
2限「応用倫理入門」応用倫理的な基本的な論点をおさらいする授業です。自己決定とは何か、環境倫理、など。余裕。
3限「キリスト教文化」トマス・アクィナス『神学大全』をベースにしながら、人間の考察は、神について何を明らかにするのか、あるいは、神学によって動機付けられた倫理学はいかなる特質をもつのかを考える授業。キリスト教的バックグラウンドは、いくら頭では理解できても、やはり感覚としてしっくりこないという苦悩の日々。
4限「自然の時間・人間の時間」それぞれの人間にとって、そもそも時間の持つ意味が均一ではないということから、労働と倫理の本質を炙り出していく授業です。哲学の本質に触れた気になる一瞬。
5限「応用倫理研究」これはオムニバス形式。猪瀬直樹とか加藤典洋さんとか豪華な顔ぶれで互いに論争しあっているのを聞くのが楽しい授業。でも自分が実際に議論に加わったときは、いい意味で冷や汗書きます。戦場。

木曜
2限「美学概論」芸術についての高級や低俗という区別が成り立たなくなった現在、それでもいかに「芸術」や「作品」という概念が可能でありうるのかを検討するポストモダン的な授業。すでにそこにある芸術に対し、やはり言葉によって価値を意味づけていくことは大事でしょう。芸術は解釈するものです。
3限「映像人類学演習@教育学部」たとえば浜崎あゆみとかマンガなどのポップな現象に、いかに映像を用いて文化人類学的にアプローチできるか。その延長線上で「ナショナリズム」も検討してみようという授業。毎週課される英文の古典とディスカッションがしんどい、けど楽しい。ゼミ取りすぎだなぁ。
4限「同上」
5限「応用倫理研究:生命を奪うことをめぐって」殺すことは必ずしも悪なのか?動物を殺しながら我々が生きているとはどういうことか?中絶とは?などを哲学的ベースに基づいて応用倫理する授業。これもゼミ形式で読書と発表が要求される。なんだ?

金曜
2限「法心理学:目撃証言心理学を中心に」目撃証言は実に信用できないものだと繰り返し言われています。人は記憶を無意識に改ざんしてしまう。その人間の認知のメカニズムに迫る授業。いわば応用心理学。法律家に学んでほしいです。
3限「心理学実験演習」毎週ハードに英語読んで動物なども用いながら実験やってます。うーんあまり面白くない。でも死ぬほどハード。泣きたい。
4限「同上」
5限「スタンダール『赤と黒』を読む」フランス語で恋のお話を満喫する授業。でも予習しんどすぎ。結局は実らない恋ですか。

集中講義
「文化人類学と映像」実際にシナリオ書いてカメラで撮って編集し作品を作ります。賞いっぱいもらった作家さんに超小人数指導してもらえるので、スキルはかなり身につく。ラッキー。

 その他いろいろ‥ですが、正直「心理学」「哲学」「教育学」「文化人類学」の4つのゼミ(普通の授業とは違い、準備を要する演習形式)を同時に取っているのは自殺行為ですね。読書廃人になりそうです。そろそろこのBlogも廃れてゆくことでしょう。これに上野千鶴子の「社会学ゼミ」も加えようと思ったけれど、さすがに。週末は現代思想的な本を読みたいし。というか、社会学の古典を順に読んでます。個人的にキャパ超えてます。更新なくても、優しくしてあげてください。では。

April 05, 2004

東京大学文学部21世紀COE 「死生学」プロジェクト

「死生学の構築」プロジェクトの概要

 2002年度に、東京大学大学院人文社会系研究科を中心とした、COE21世紀プログラム「生命の文化・価値をめぐる『死生学』の構築」が発足しました。
座長の島薗進(宗教学)は、死生学の意味について次のように説明しています。(本プログラムのニューズレター原稿より)

 「生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築」は、現代の知の布置の中でますます重い位置を占めるようになってきている「いのち」や「死」をめぐる諸問題について、ある広がりと深みをもった総合的な学知を構想し構築しようとするものである。
 死生学はまた、文明や宗教についての奥深い知の継承、発展を目指すものでもある。宗教・芸術・文学はいつも「いのち」や「死」を問い続け、描き続けてきたとも言える。
 個々のディシプリンがその伝統に根ざしつつ、「死生学」の方向へ新たな試みに踏み出していく、その力を結集したい。有望な研究領域群が頭をもたげつつあり、それらを括りながらあるまとまりを展望する語として「死生学」は確かに有効である。人文学の幅広い諸力を結集し、世界的は知的発信の拠点として名乗りを上げるにふさわしい呼称である。

 21世紀COEはご存知ですよね?大学における研究促進のため、各大学間(各プロジェクト間)で競争させて、有意義とCOE委員会が判断したものに対しては派手に金を出そう、というやつです(詳細)。で、現在東大文学部(人文社会研究科)で一番華やかに行われているCOEプロジェクトが、この「死生学」というわけです。

coeimage1.jpg

 プロジェクト自体は大変個人的に興味深く、その自分なりの評価は後日書きますが、まぁとにかく内部事情が面白い。たとえば宗教学と心理学みたく、各学科間の金の取りあいの裏話、教授と教授の争いが‥(略。「死生学」というテーマに設定したのは、予算配分する際に「潰しが利くから」という噂もあるくらい。個人的には実験室がぴかぴかになって大満足ですが。それでも、このテーマ自体は、応用倫理的に何を文学部(人文社会研究科)から発信できるのか、どうひとつの課題に各専門領域から協同しうるのか、という観点から非常に興味深く、個人的には浸りたいプロジェクトですね。

東大COE「死生学の構築」今後の予定

2004年4月8日(木)
17:00〜19:00
東京大学・法文1号館 217教室
講師:
Glennys Howarth
(Social Science Department, University of Bath)
講演題目:
"Current Developments in Death Studies in the UK and Europe"

 勇気ある人は参加すべし。(本郷キャンパス)